No.11「感動」と「笑い」と「夢」が遺伝子をオンにする


村上先生から「遺伝子のスイッチがONになる」お話を20年近く聞き続けてきました。
先生は多くの著名な方々と対談されていて、その中でも繰り返し話題にされています。

約20年前の『致知』に掲載された、横澤彪さんとの対談の「アホ談議」が、とても面白かったので、一部をご紹介させていただきます。今では入手しにくい貴重なものです。
横澤彪さんは当時のテレビ界随一の名プロデューサーで、村上先生の「笑い」の研究も、横澤さんとの出会いによって大きく実を結んだと言えます。
お二人の対談は情意投合といいますか、肝胆相照らすといいますか、読んでいてそんなふうに感じました。

今、お二人はあちらの世界からこちらの世を眺めて、「もっとアホになったらいいんや」と呟いていらっしゃるように思います。

『致知』2003年9月号

対談 村上 和雄 & 横澤 彪「感動と笑いと夢が遺伝子をオンにする」より抜粋

村上 ところが、私が吉本さんと組むといったら、まともな科学者は理解できない。みんな笑うんですよ。笑いと遺伝子というこのミスマッチがおもしろいんですけれどもね。科学の世界でも、ミスマッチからよくおもしろいものが生まれてくるんですから。中にはおもしろいと言ってくれた人もいますが、これは感性の問題なんですね。

横澤 おっしゃる通りです。そういうアホっぽいのってなかなか理解されないんですね。でも普通の人は、笑いと遺伝子の関係なんて、まず考えないじゃないですか。だから先生の発想というのは、端からアホなわけです(笑)。

村上 それはよく分かります(笑)。私はもともとあまり普通じゃないところがありますからね。

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横澤 今度は私の仮説なんですが(笑)、笑うためにはね、まずアホにならないと笑えないんですよ。年を取って配偶者が亡くなったりすると、しょぼくれるのはだいたい男のほうが多いんですが、これはアホになりきれていないからだと思いますね。つまり男が、過去を引きずって歩いているからなんです。俺はこういう大学を出て、こういう大企業で働いて、こういうポストについて、どうだみたいなのがあるんですが、辞めてしまえばただのおじさんなんですね。だけどそうなりきれない。過去を引きずってずっと歩いてきた人は笑わないですよ、教養が邪魔をして(笑) 。
俺は、こんなくだらないやつらの笑いには絶対に乗らないぞってなるんです。

村上 横澤さんは、アホというのはどういうものだとお考えですか?

横澤 アホというのは、やっばりおもしろいことに無条件で反応するっていう姿勢でしょうね。もう一つちょっと利口ぶって言えば、自分の目を持っているかどうかということですね。

村上 なるほど、自分の目ですか。

横澤 はい。自分なりの価値判断の物差しをきちんと持っているかどうか。それを持っていればアホになれると思うんです。

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横澤 ですから私は、アホというものをすごく高く評価しているんですよ。アホになるのって大変ですからね。アホは大事にしなければならないと思っています。

村上 世の中を変えるのもアホですしね。私たち科学者も、「あいつアホやなぁ」と言われるくらいユニークなことをやらなければ偉大な発見にはなかなか結びつかない。だから「アホやなぁ」というのはある意味ではほめ言薬なんですね。

横澤 本当にそうです。ユニークな発想は、アホでなければとても出てこないですよね。学習したものというのは、理屈っぽくなるし、どこかに手本とか過去の例があって、そこに基づいて学んでいくわけですからね。で、その通りにやっていると、発見したり遊んだりということがなおざりにされてしまう。だから思いきって遊びのほうから入っていくという切り口を採ると、それまでと違った発想にも結びつきやすいし、もちろん笑いもすごく理解しやすくなるんですけどね。

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村上 だからアホになれる人は、変に威張っている人よりもはるかに人間味があって素晴らしい。特に、賢ぶってる人間が多いいまの社会の中で、本当にアホになれる人はすごいと思いますよ。

横澤 もっと自分をさらけ出すような生き方をしたらいいんじゃないかと思うんです。一人ひとりがそうなれば、日本もきっと元気になると思いますよ。いま、どうしてこんなに世の中が暗いかというと、周りが嘘つきばっかりだからでしょう。一番嘘をついてるのは国会というところでね、政治家っていうのは一番嘘つきなわけでしょう。その次が官僚で、その次が銀行かなと、みんなもう分かってしまったわけでね。そういう方々が、もうちょっとアホというものについて真剣に考えてもらえるようになれば、世の中も変わってくるんじゃないかと思うんです。

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横澤彪さんはこの対談の後、大学の先生に就任されます。吉本から一転して「アホを育てに行く
教授」となられました。ものすごく面白い大人気の講義だったそうです。
お二人の、ひとと違う感性をもった「アホ」が新しい時代をつくる、というメッセージは今の時代にこそ必要だと感じます。