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【正論】⼤隅良典⽒の業績から⾒た「生と死」    筑波⼤学名誉教授・村上和雄2016.12.7 08:30

2016年のノーベル医学・生理学賞を受賞した東京⼯業⼤学栄誉教授、⼤隅良典⽒の授賞式が12⽉10%e6%ad%a3%e8%ab%96%e5%86%99%e7%9c%9f161207⽇に⾏われる。

21世紀に⼊ってからほぼ毎年のように⽇本⼈が受賞しており、しかも⼤隅⽒のケースは単独受賞である。ここでは⼤隅⽒の業績を生物の持つ共通の原理の⾯から考察する。

≪細胞⾃らが死を決定する≫

私たちは全く意識していないが、すべての細胞の中で、驚異的なスピードで正確に分⼦レベルでの化学(酵素)反応がおこなわれている。酵素は化学反応のスピードを数億倍にアップし、しかも反応相⼿を正確に認識する。したがって

⼩さな細胞の中で何千という反応が同時進⾏できる。実に⾒事である。

生化学者は、まずタンパク質、脂質、糖質などの⾼分⼦の合成反応のメカニズム解明に⼒を⼊れた。そして、合成に関与する酵素や遺伝⼦の研究で⼤きな成果を上げた。しかし、⾼分⼦の分解反応の解明は出遅れた。

古くから細胞の死として知られる「ネクローシス」(壊死(えし))は、やけど、毒物、打撲、溶解性ウイルス感染などによって突発的に起こる、いわば事故死のような細胞死である。

1972年に病理学者カーは、患部の病理標本を観察している途中で、ネクローシスとは形態的に全く違う奇妙な細胞死の過程があることに気付いた。  彼が⾒たのはネクローシスによる膨らんだ細胞ではなく、縮⼩し断⽚化された形態の細胞死であった。彼はこの現象を、細胞⾃らが死を決定し、ある

⼀定のプロセスを踏んで死が実⾏されていると考え、「アポトーシス」の概念を提唱した。

アポトーシス(apoptosis)とは、ギリシャ語で  “apo”  は「離れて」“ptosis”   は「落ちる」の意味で、カーは細胞の⼩⽚が死にゆく様⼦を、秋に枯れ葉が落ちる様⼦になぞらえたのである。

≪明らかにされたオートファジー≫

生物は、複雑な生体を形作り、生命を維持し、進化をするための戦略として、細胞⾃らが死ぬことができる機構を獲得した。この遺伝⼦によって制御された積極的な細胞死を「アポトーシス」と呼ぶ。

アポトーシスの機能としてよく知られるのは、ヒトの発生時に⼿足の指の間の⽔掻きのような細胞が死に、指が分離されて形成されることである。また、胎児における神経回路網の形成過程では、あらかじめ余分に神経細胞がつくられ、その中で、シナプスを形成できなかった細胞にアポトーシスが働き、取り除かれる。

これらは発生過程の中で画⼀的に起こるプログラム細胞死といえる。また、発生が終わった後も身体の中でアポトーシスは働く。遺伝⼦が傷つき、異常に増殖してしまう細胞はがんをつくるが、これらの多くは遺伝⼦の働きで⾃死し、除去される。

アポトーシスも多くの因⼦や遺伝⼦によって制御されていることが最近の研究によって分かり、その解明に貢献した欧⽶の3⼈にノーベル賞が与えられた。

⼤隅⽒はアポトーシスとは別に、酵⺟を用いて細胞外ではなく細胞内での分解系の研究でノーベル賞を受賞した。近年、脚光を浴びているオートファ ジーの研究であるが、実は30年以上も前にすでに顕微鏡で観察されていたにもかかわらず、その過程に関与する因⼦は⻑らく不明であった。オートとは

「⾃分」、ファジーは「⾷べる」という意味のギリシャ語で、⾃⾷作用のことである。

1993年、⼤隅⽒らはオートファジーに関連する遺伝⼦群を発⾒した。この研究を契機にして、オートファジーの役割の詳細が次々と明らかにされている。そして、酵⺟だけでなく植物、⿂類、哺乳類、⼈類などの全ての真核生物にオートファジーは普遍的に存在することが判明した。

≪変わりつつある病気への考え⽅≫

この研究が⼤きく発展するきっかけになったのは、オートファジーの遺伝⼦を⽋損するマウス(ノックアウトマウス)の作製である。このマウスを用いて、オートファジーは多くの病気に関係することが⾒いだされた。例えば、がん、アルツハイマー病やパーキンソン病の神経疾患、感染病などであ   る。

アルツハイマー病は、古くなった神経細胞に異常なタンパク質が蓄積することにより発症する。オートファジーを適切に制御できればアルツハイマー病の予防や治療につながると期待されている。

アポトーシスやオートファジーの研究の発展に伴い病気に対する考え⽅も⼤きく変わりつつある。すなわち病気とは細胞の増殖・分化・死のバランスが崩れてしまうこと、と理解されつつあるのだ。

細胞は生命活動に必要なタンパク質などの物質を絶えず合成するだけでなく、絶えず分解し続けるプログラムを遺伝⼦レベルでインプットされている。

生と死は対極にあるのではなく、生の中に誕生と死がペアで書きこまれている。

(筑波⼤学名誉教授・村上和雄   むらかみ    かずお)

以下産経ニュースの掲載URLです。

http://www.sankei.com/column/news/161207/clm1612070005-n1.html

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時計遺伝子に耳を傾けよ 「致知」11月号

時計遺伝子という言葉をご存知でしょうか?まだ世間では、あまり浸透していないのですが、この研究の第一人者である石田直理雄先生と村上和雄の対談が、「致知」11月号に掲載されました。かなり遅くなってしまったのですが(すみません( ;∀;))、この時計遺伝子関するお話がとても面白かったので、少しご紹介いたします。

生体にリズムがあることは昔から知られていましたが、最初の時計遺伝子がショウジョウバエで発見されたのは1971年のことです。真核生物はもちろん、現在ではほとんどの生物に時計遺伝子があることが分かっています。

時計遺伝子が睡眠に関係していることが2000年以降わかってきました。例えば世の中には4時間くらいの睡眠で十分の人がいますが、これは、時計遺伝子の配列がたった一個異なっているからということがわかってきました。別の配列の1個が異なると普通より長い睡眠が必要になります。

私が朝、弱いのは意志が弱いのではなく時計遺伝子に左右されている可能性がある…ということ!?

ノンレム睡眠は脳のための睡眠で、レム睡眠は筋肉の睡眠です。大人の睡眠はノンレムが90分来てその後にレムが90分と交互に来る。特にノンレム睡眠は完全に脳が休んだ状態なので地震が来てもすぐには起きられません。

来るならせめてレム睡眠の時に来て、地震…((+_+))

タニタが「スリープスキャン」というベッドの下に敷くだけで睡眠解析できる機械を作りました。これで調べると、必ずしも睡眠時間が長ければ睡眠点数がいいわけではなく、睡眠の深さ、レム睡眠とノンレム睡眠の規則正しい交代が影響している…。徹夜明けの睡眠や夕食抜きなどで睡眠の質が悪くなり、そのようなダメージが続くと時計遺伝子の発現がリズムが悪くなり、体内時計の老化が進む。

今疫学的に問題になっていることの一つに、フライトアテンダントに乳がんや肺がんが多いことがあります。その要因の一つが時差ボケで、時計遺伝子の発現に影響が及び、がんになりやすい体質を作っていると言われます。

戦後メタボリックシンドロームが増えた原因は食の西洋化と言われていたが、実はそうではなく、夜型社会化によるサーカディアンリズムのかく乱が原因です。

「睡眠は何のためにあるのか?」時間生物学者の答えは「脂肪を燃やすため」。時計遺伝子を壊してしまうと1個の内臓脂肪の大きさがどんどん大きくなるんです。

海外で、抗がん剤の投与時間を変えただけで5年生存率が飛躍的に上がったという実験結果が得られています。これは薬理時間学の分野の研究ですが、薬ごとにもっときちんとした投与方法を打ち出すことができればQOLや医療費削減につながるはずです。例えば術後の点滴を24時間から、ヒトの活動時間だけに変更することで術後の経過がとてもよくなることがわかりました。

石田直理雄先生は、現在、村上と同じ(公財)国際科学振興財団の、時間生物学研究所でご研究をされています。今後の研究成果が本当に楽しみです!

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PHP 1月号掲載 村上和雄 「心の持ち方で、いい遺伝子はオンになる」  

ちょっと抜き書きします、、、

「50年以上生命科学の現場にいます。この間科学技術は飛躍的な進歩をとげました。・・・進歩とは変化するということです。「科学的に正しい」と言われれば、反論できないと思うかもしれません。しかし、それはその時点での「正しい」であって、明日にはどう変わるかわからない。・・・『スーパーブレイン』(保育社)の翻訳を手がけましたが、脳は何歳になっても発達し続け、生涯現役だということがわかったとありました、・・・心や意識の持ち方で脳も遺伝子(の働き)も変わるのです。・・・他人と比較して一喜一憂するのではなく、今生きていることのありがたさに感謝する、それが幸せに生きる秘訣・・・」

PHPは皆さんもどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか?小さくてお値段もお安く(205円!)、でも中身はとても濃くて心豊かになれる本です。久しぶりに手にして読んでみましたが、コスパ高いです。是非!

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「SWITCH」5周年記念上映会のお知らせ

2011年3月に完成し、同年の4月12日から自主上映会がスタートした『村上和雄ドキュメント「SWITCH」』。これまでに国内外累計400か所以上で上映され、約7万人を動員したそうです。現在も自主上映が各地で開催されていて、多くの皆様にこの映画のメッセージが届けられていることはとても素晴らしいと思います。

今回「SWITCH」5周年記念上映会が下記のとおり行われます。村上和雄も参加いたします!

【日時】 2016年7月9日(土) 10時半~16時半(予定)
「第一部」映画の上映&朗読
「第二部」音楽の調べ&出演者のトーク
10:30  開場
11:00  第一部 開演
13:00~ 休憩
13:50
13:50~ 第二部 開演
16:30
16:30  終演予定
【場所】 東京ウィメンズプラザホール ※地下鉄 表参道駅下車徒歩5分
【出演】  村上和雄博士、鈴木もも子、堤 江実、佃 良次郎、入江富美子(ビデオレター)、switch村上先生写真※ナビゲーター鈴木七沖
【参加費】 3000円(税込)
【主催】  『SWITCH』5周年記念実行委員会

ご参加のお申し込みは下記のURLからお願いいたします。

http://www.sunmark.co.jp/switch/event/

 

脳は生涯にわたり発達し続ける 産経新聞「正論」2014/9/26掲載

脳は生涯にわたり発達し続ける 筑波大学名誉教授・村上和雄
2014.9.26 05:02[正論]産経140926

黄金期を迎えつつある脳研究によって、私たちが従来教えられてきた脳に関する常識は、次々と破られてきた。

例えば、傷ついた脳が自然に治ることはないという通説は誤りで、脳神経細胞は環境に応じて再配線できる。

さらに運動、精神的活動、社会的なつながりが、神経細胞の発展を促すといった事実が判明した。従って、脳の働きは決して固定的なものではなく、作り替えが可能である。以前なら思いもよらなかったような驚異の治癒力が脳に備わっていることが分かった。

《脳の働きを制御するのは心》

脳から全身の細胞に指令が出ているから、脳は身体を動かすリーダーのように見えていた。しかし、決してそうではなかった。

脳を動かしているのは、自分の心であり、意識だ。脳はテレビやラジオの受信機のようなものであり、心や意識が真の創造者である。脳は私たちが「できる」と思っていることしかできない。逆にいえば、「できない」と考えていることはできないのだ。

このダイナミックでしなやかな脳の働きは、遺伝子の働きに関する最近の研究とよく符合する。

ヒトの全遺伝情報(ゲノム)の解読以前は、DNAは生命の設計図であり身体の働きを支配していると考えられていたが、事実は違っていた。

DNAは単なる設計図にすぎず、それも環境によって書き換え可能な設計図である。従って、生命はDNAに支配されていなかった。それでは、生命を支配しているのは脳か? そうではない。

脳は、前に述べたように情報の受信装置のようなものであり、受信装置そのものが歌ったり、考えたり、ドラマを制作したりするものではない。

真の制作者は、DNAや脳ではなく「人間の意識」であると考えざるを得ない。そして、生命の真の創造者は、人間の意識をも超えた大自然の偉大な働き「サムシング・グレート」だといえる。

《脳には無限の可能性がある》

心身医療の分野で世界のリーダーであるディーパック・チョプラ博士は、身体と心を統合的に癒やす独自の理論を展開して成果を上げている。彼は米誌タイムによる「20世紀の英雄と象徴100人」にも選出されている。

ごく最近、チョプラ博士と対談する機会があった。彼の考え方は、私どもが「心と遺伝子研究会」で10年にわたり研究し、発見した実験結果や考えに驚くほど近いことが分かり、今後、情報交換しようということになった。

博士の近著「スーパーブレイン」(ディーパック・チョプラ、ルドルフ・E・タンジ共著、保育社)の翻訳にも携わり、多くのことを学んだ。博士は次のように述べている。

慢性病は意識がつくり出している。怒りや恨みや憎しみなどの感情を持つと、それが悪い遺伝子を活発にしてしまい、ガンや心臓病の原因となる炎症を起こす。一方、喜びや愛、他人の成功を喜ぶという感情を持つと、良い遺伝子が活発になり、身体は病気にかかりにくくなって、肉体年齢も若返る。脳には心と身体と外界のバランスをとる自己制御装置があり、これを上手に使うことによって、素晴らしい人生を築くことができる-と。

脳に使われるのではなく、脳を上手にコントロールして使うことが肝心だ。そのためには、固定観念を捨て去り、柔軟性を持ってリラックスすること、素直であること、心配しないことなどが大切である。そうすることにより、あらゆる局面を切り開くことが可能になる。

身近なところでは、なかなかできないダイエット、振り払えない心の傷、仕方がないとあきらめていた体力の減退、脳の老化にかかる認知症や鬱病まで克服できる可能性がある。

《遺伝子のオンとオフで進化》

脳は現在も環境や心と相互に作用しながら進化を続けている。今や、ヒトの全遺伝情報(ゲノム)とチンパンジーのゲノムを比較することができるようになった。

そこで判明したのは、ヒトにはあるもののチンパンジーにはないという遺伝子は一つもないということだ。では、ヒトとチンパンジーのゲノムはどこが違うのか。それは、タンパク質をコードする配列ではなく、遺伝子のオンとオフに関与する配列にあった。

脳は固定的で、機械的で、確実に衰えていくものだと思われていた。しかし、実際の脳の姿は全く異なることが分かっている。この瞬間も私たちの脳は変化を続けており、新しい現実を生み出している。

人は心の持ちようを変えることによって、遺伝子のオンとオフを切り替えれば、一生涯進化できる可能性がある。

一般に、頭がいい人と悪い人がいるといわれているが、脳そのものにはいい、悪いの区別はない。使い方によって、良くなったり悪くなったりする。脳を上手に使えば、思いは必ず実現する。(むらかみ かずお)

(下記産経新聞のウェブページです)

http://sankei.jp.msn.com/science/news/140926/scn14092605020002-n1.htm

村上和雄 中外日報「提言」⑤

今日は中外日報「提言」⑤2014年6月4日掲載分(最終回)です。

朝夕秋の気配がしてまいりましたが、なにより今年は大雨の影響が深刻です。夏の夕立のような風流なものではなく、局地的に短時間に滝のように雨が降るというのは、私が小さいころには経験がありません。地球規模で気候もどんどん変わってきているようですね。

大きく変わる環境の中で人は変わらないものを求めているのかもしれません。

中外日報140604「提言」

村上和雄 中外日報「提言」④

中外日報140521「提言」

お盆も過ぎ朝夕涼しくなってまいりました。この時期はいのちについて

思いを馳せる機会が多くなりますね。

今日は中外日報「提言」④2014年5月21日掲載分です。

 

産経新聞「正論」の村上和雄のオピニオンです

産経新聞「正論」の村上和雄のオピニオンです。

和食が語る日本文化の「遺伝子」 筑波大学名誉教授・村上和雄
2014.2.18 03:11 (1/4ページ)[正論]

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された和食について考察したい。

日本食が健康に良いことは以前から認められていた。米上院農林委員会は、3年間にわたって調査した結果、文明先進国の生活習慣病は不自然で間違った食生活にあるとマクガバン報告書で結論付けるとともに、国民に食事改善を呼びかけ、日本型の食生活を理想的な手本として取り上げた。

≪あるがままの状態で食べる≫

日本食の中心はコメである。コメは、低カロリーであるだけでなく、タンパク栄養的にもすぐれている。日本人は、コメだけでなく大豆食品(豆腐、納豆、みそ汁など)を一緒に摂取する。この組み合わせが絶妙で、両々相俟(あいま)って不足する必須アミノ酸を補い合い、それが牛乳や肉のタンパク栄養価に匹敵する。日本人は明治以前にはほとんど肉を食べてこなかったが、コメと大豆を一緒にとることにより肉を代替してきた。

日本食ではコメ以外に魚、野菜、海藻などを多く摂取する。土と海から採れたものが食物全体の85%で、動物が15%という食事バランスが最善だとされる……続きは下記URLで!

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140218/trd14021803110001-n1.htm

 140218産経正論trd14021803110001-p1