『致知』連載第七回「遺伝子組み換え技術はどうあるべきかを考える」


『致知』連載中の村上和雄「生命科学研究者からのメッセージ」。一月号のテーマは「遺伝子組み換え技術はどうあるべきかを考える」です。

前回、イネ全遺伝子解読プロジェクトの話が述べられました。これを読んだ方の中には、その解読された遺伝子情報はどのように使われたのだろう、と思う方もいらっしゃるでしょう。その成果は公開され、管理は農水省が行っていました。ところが、2018年、日本の種を守ってきた「種子法」という法律が突然廃止されました。一般人にはなじみのない法律ですが、その「種子法」が日本の美味しいコメを守ってきたといえます。イネ遺伝子プロジェクトは日本人の魂であるイネの遺伝子を日本人の手で解読する、という思いでなされたものであったのに、ここに来て、国は食糧の基本であるコメ、ムギ、ダイズの種子市場を民間企業に任せることにしてしまったのです。そしてタネの巨大な市場はモンサントをはじめとする外国企業の寡占状態です。

いっぽう遺伝子組み換え作物は日本では消費者に嫌われて広まっていないかのようですが、実際は加工に使われる大豆や小麦などはほとんど輸入品であり、遺伝子組み換え作物です。消費者は知らないうちにそれらを食べています。遺伝子組み換えでない豆腐や納豆だけ選んでいても、食糧自給率の低い日本ではそれらを全く食べずに生きていくのはほぼ不可能といえます。ここには、大きなごまかしがあるといえます。遺伝子組み換え技術は、ひとが優良な品種を作ってきたその長い歳月を一気に短縮してしまうことができる夢の技術です。そこに村上の思いもありました。しかし、自然を短い時間で操作することに危険を感じている人も多い。そして、どこまでが良くてどこからが行き過ぎなのか、その判断基準がなく、技術が発明されれば歯止めをかけるものがない、といえます。

写真:大豆畑。アメリカから輸入されている大豆の9割が遺伝子組み換え作物だという

私達は大変難しい時代に生きています。一人一人がこの国の将来を考えていかなければいけない時代です。今回のメッセージを読んで、自分たちが食べるものについて何も知ろうとせず、政治家、科学者、大企業に任せて、自分たちで選択することをしなくなれば、日本や世界は後戻りできない状況になっていく危険をはらんでいる、そのように感じました。